動物園や水族館で大人気な動物である「コツメカワウソ」。
日本でも、ペットとして飼育している姿をYouTubeなどで見ることができます。
そんなコツメカワウソについて、「かわいい」のほかに、みなさんはどこまで知っていますか?
コツメカワウソの特徴や取巻く現状について、解説していきます。
コツメカワウソはどんな動物?
コツメカワウソは、学名で「Aonyx cinerea」と呼ばれ
「哺乳綱食肉目イタチ科ツメナシカワウソ属」に分類されます。
コツメカワウソという名前は、足にちいさな爪がついている姿が由来。
主に家族で群れをなして生活をしており、湖や川辺、湿地などに暮らす半水生動物。
昼行性で、群れではメスが優位に立ちます。
半水生動物とは‥水中あるいは水界に密接に依存して生活する動物。
※参考:コトバンク/水生動物
形態(体長・尾長・体重・毛色)
コツメカワウソの形態は以下になります。
・体長:約40~65cm
・尾長:約25~35cm
・体重:約3~6kg
・毛色:体のほぼ全体が灰褐色、口まわりから首は白っぽい色をしている。
生息地
コツメカワウソは低地から標高2,000mほどに生息しており、主な生息地は下のとおりです。
インド、インドネシア(スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島)中国南部 など
主食
コツメカワウソは、野生下と飼育下で食べるものが変わります。
野生下:甲殻類(ザリガニ・カニ)・貝類・魚類・昆虫・カエル など
飼育下:魚類・ドライフード(キャットフード)・とりのささみ など
食べる量は個体により異なりますが、飼育下ではエサのあたえすぎによる肥満や糖尿病に注意が必要です。
平均寿命
コツメカワウソの平均寿命は、野生下と飼育下で異なります。
・野生下:約10~12年
・飼育下:約12年~15年
もちろん個体により寿命にちがいはありますが、飼育下のほうが平均すると長生きする傾向にあるようです。
コツメカワウソを取巻く環境
動物園や水族館で大人気のコツメカワウソですが
コツメカワウソを取巻く環境はとても深刻です。
IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト
コツメカワウソは、住処としている水辺の減少、汚染、近年のペットブームや毛皮の売買目的による乱獲によって、個体数が激減しています。
そのため、”絶滅の危険性があると動物”として、IUCN(国際自然保護連合)が定める
「レッドリスト:危急種(VU)」に指定されています。
レッドリストについて、「危険な動物をリスト化したもの」だと勘違いしている人もいるけど、「絶滅の危険性がある動物をリスト化したもの」なんだよ!
IUCN(国際自然保護連合)レッドリストのほかに、国や都道府県が独自に定めているレッドリストもあります。
ワシントン条約附属書Iに掲載
レッドリストのところでも触れましたが、コツメカワウソは絶滅の危険性がある動物とされています。
コツメカワウソを絶滅の危機から保護する目的から、2019年8月におこなわれたワシントン条約の第18回締約国会議において、これまで「附属書Ⅱ」に掲載されていたコツメカワウソを、「附属書I」に格上げする案が可決。
同年11月より、販売用の国際取引が原則禁止となりました。
日本国内では、附属書Iに掲載された生きものを保護する目的から
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」により
販売・頒布目的での陳列と譲渡が原則禁止となりました。
コツメカワウソはペットとして飼えるの?
結論からいうと……日本国内において、コツメカワウソを新規でペットにするのはむずかしいです!
あくまでも、”むずかしい”であって、”無理”ではないのがポイント!!
※例外的に飼育可能。
「附属書Ⅱ」に掲載されていたころは、輸出国の許可さえあればペット目的での商業取引が可能だったんだよ!
例外について補足
国内にすでに飼育されている個体、または国内で繁殖させた個体については、環境省への登録(登録票を取得)をおこなえば、売買・譲渡が可能です。
※届出にはさまざまな条件があります。
これまでは、専門のペットショップなどで、約60万円~100万円(赤ちゃんは100万円~)ほどで取引が行われていました。
今後、ペット目的での新規輸入が困難になったことから、値段の高騰が予想されます。
「世界カワウソの日」
カワウソを取巻く環境や種の保存を啓発する目的で
毎年5月の最終水曜日を「世界カワウソの日(World Otter Day)」と定めています。
飼育下での懸念点・注意点
コツメカワウソは”飼育がむずかしい動物”とされています。
その理由として主に以下があげられます。
①鳴き声が大きい
②臭いがきつい
③運動量がすごい
④水道代がかかる
⑤噛む力が強い
⑥コツメカワウソを診察できる獣医さんが少ない
うえから順にみていきましょう。
①鳴き声が大きい
「キューキュー」とかわいらしい声で鳴きますが、甲高く近隣に迷惑をかける可能性があります。
②臭いがきつい
コツメカワウソは肛門嚢(こうもんのう)という分泌物をためる器官をもっており、排泄の際に分泌液もいっしょに放出するため、排泄物はきつい臭いがします。
分泌液には、「ナワバリを主張する」役割があるとされています。
③運動量がすごい
コツメカワウソは運動するのが大好きです。寝ているとき以外はずっと走り回っています。
とても機敏に動き回るので、サークルを利用する等して行動範囲を制限しておく必要があります。
適度に運動をさせてあげないと、ストレスで脱毛症などの病気になることもあります。
④水道代がかかる
もともと水辺に生息する動物なので、1日に数回の水浴びが必要です。
湯舟やたらいに水をためて、水浴びをさせているところが多いようです。
運動とおなじく、水浴びを怠ると、ストレスにより病気になることがあります。
⑤噛む力が強い
自然下ではカニなどの甲殻類を食べることもあるため、かたい甲羅をかみ砕くほどの咬合力(噛む力のこと)を持っています。
本気で噛まれると大出血につながる可能性もあり、注意が必要です。
⑥コツメカワウソを診察できる獣医さんが少ない
コツメカワウソはペットとしての需要が高まり、家庭での飼育例も増えましたが、犬や猫のようなメジャーなペットとはいえません。
そのため、診察できる獣医さんが多くありません。
コツメカワウソを飼育している施設(水族館・動物園)
コツメカワウソを飼育している動物園や水族館は全国各地にあります。
こちらでは、水族館・動物園にわけてご紹介します!
- 小樽水族館(北海道)
- サンピアザ水族館(北海道)
- サンシャイン水族館(東京都)
- アクアパーク品川(東京都)
- 八景島シーパラダイス(神奈川県)
- 新潟市水族館(新潟県)
- 三津シーパラダイス(静岡県)
- のとじま水族館(石川県)
- 越前松島水族館(福井県)
- 鳥羽水族館(三重県)
- 大阪海遊館(大阪府)
- 桂浜水族館(高知県)
- 宮島水族館(広島県)
- 伊勢シーパラダイス(三重県)
- 南知多ビーチランド(愛知県)
- おさかな館(愛媛県)
- 大分マリーンパレス(大分県)
- 円山動物園(北海道)
- 大森山動物園(秋田県)
- 那須どうぶつ王国(栃木県)
- かみね動物園(茨城県)
- 埼玉こども動物公園(埼玉県)
- 東武動物公園(埼玉県)
- 狭山智光山動物園(埼玉県)
- よみうりランド(東京都)
- 上野動物園(東京都)
- 多摩動物公園(東京都)
- 千葉市動物公園(千葉県)
- 市川市動植物園(千葉県)
- 市原ぞうの国(千葉県)
- シャボテン動物公園(静岡県)
- 浜松市動物園(静岡県)
- のんほいパーク-豊橋総合動植物公園(愛知県)
- 東山動植物園(愛知県)
- NIFREL:ニフレル(大阪府)
- 姫路セントラルパーク(兵庫県)
- 神戸市立王子動物園(兵庫県)
- 神戸どうぶつ王国(兵庫県)
- 池田動物園(岡山県)
- とくしま動物園北島建設の森(徳島県)
- とべ動物園(愛媛県)
- 高知県立のいち動物公園(高知県)
- アドベンチャーワールド(和歌山県)
- 徳山動物園(山口県)
- ときわ動物園(山口県)
- 福岡市動植物園(福岡県)
- 鹿児島市平川動物公園(鹿児島県)
- 長崎バイオパーク(長崎県)
※上の飼育施設一覧は、「日本動物園水族館協会」ホームページを参考にしています。
日本動物園水族館協会のホームページには載っていませんが
沖縄県にある「DMMかりゆし水族館」でもコツメカワウソを飼育していますよ!
カワウソQ&A
コツメカワウソについてよくある質問をまとめてみました!
Q:飼うのはむずかしいけどカワウソと触れ合ってみたいです
A:動物園・水族館などでコツメカワウソとタッチできるところもあります!
また「カワウソカフェ」もありますので、お近くのお店を探してみましょう。
※新型コロナウィルスの影響で、ふれあいイベントを中止している施設もあります。
事前に各施設のホームページを確認する、電話で問い合わせるなどしておきましょう。
Q:日本固有のカワウソはいるの?
A:日本にも「ニホンカワウソ」というカワウソがいました。
しかし、1979年(昭和54年)に高知県須崎市で目撃されたのを最後に、生きた状態での発見はされていません。
2012年(平成24年)に絶滅種に認定されました。
ニホンカワウソは、明治~昭和時代にかけて
上質な毛皮や薬の材料として乱獲されてしまいました。
(追記:2020年10月1日)
2020年9月、ニホンカワウソに酷似した生きものが「高知県大月町」にて発見されました。現在のところ詳細は不明です。
発見となれば、最後に目撃された1979年から実に41年ぶりとなります。
コツメカワウソが群れで行動するのに対し、ニホンカワウソは単独で行動していたとされています。
報道された写真を見てみると、1個体のみで行動している姿が納められており信憑性が高そうです。
しかし、発見された個体の体長が1m20cmほどとされているのに対し、ニホンカワウソの体長は
約82㎝が最大とされています。
そのことから、今回発見された個体が本当にニホンカワウソなのか不明な部分が多々あります。
※もちろん個体によって体長は異なるため、大きなサイズがいても不思議ではありません。
カワウソの中でもいちばん大きな”オオカワウソ”の体長は、最大で約1m40㎝とされています。
Q:カワウソの天敵はどんな動物なの?
A:カワウソを捕食する代表的な動物として、おなじ水辺に生息する「ヘビ」や「ワニ」があげられます。
カワウソのなかには、ワニも襲ってしまう「オオカワウソ」という種類もいます。
こちらは後日記事にしますね!
※「オオカワウソ」を検索すると過激な画像が多数出てきますので、自己責任でお願いします。
まとめ
コツメカワウソをはじめ、世界中でたくさんの動物たちが絶滅の危機に瀕しています。
動物たちの置かれている状況を知ることは、生態系を知ることにつながります。
「気づいたら絶滅していた」
そんなことがないよう、後世の子どもたちにもコツメカワウソのかわいさを感じてほしいと思います。
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